安値低迷から抜け出せないプラチナ価格の論理
自動車触媒や宝飾品などに使用されるプラチナ(白金)相場が急落している。
2019年8月下旬から9月上旬にかけては、金やパラジウムなど他貴金属相場に対する割安感が評価され、
1オンス=850ドル水準から9月5日の1,000.80ドルまで急伸し、昨年3月以来となる約1年半ぶりの高値を更新していた。
プラチナ相場は急伸したとは言え、金相場が1,500ドル台、パラジウム相場が1,600ドル台での取引になる中、
1,000ドル水準は依然として相対的な割安感があり、
マーケットの一部では「低迷が続いていたプラチナ相場の本格的な高騰が漸く始まった」といった歓迎の声も多く聞かれた。
しかし、その後は比較的短時間で920~970ドル水準までコアレンジを切り下げ、
2019年9月末を前に900ドルの節目も割り込む急落地合を形成し、これまでの上昇分を相殺する反落となる、
いわゆる「往って来い」と呼ばれる相場展開になっている。
8月下旬の急伸前の値位置は若干上回っているものの、今回も本格的な上昇トレンド形成には失敗した格好になる。
9月はパラジウム相場が連日の過去最高値更新になったが、プラチナ相場は一段高を打診することに失敗した。
パラジウムは需給ひっ迫化に対する警戒感が存在するものの、プラチナは逆に供給過剰が警戒された状態にあり、
パラジウム相場と同様に需給環境・見通しを評価するのであれば、寧ろ値下り対応が支持されることになる。
今年のプラチナ相場は、需給緩和評価から売られ、
他貴金属相場に買われる展開を2~3カ月程度のタイムスパンで繰り返す展開になっている。
世界経済の減速感が強まる中、プラチナの自動車触媒や宝飾需要は伸び悩んでおり、
投資需要が大きく上振れするようなことがなければ、供給過剰感が強い状態が維持される。
一方、金やパラジウム相場に対しては割安感がある値位置であることは間違いなく、
需給とは関係のない価格上昇圧力も頻繁に発生している。
工業用金属としての性質を重視すれば値下り、貴金属としての性質を重視すれば値上りが正当化される相場環境にある。
これまでと同様に800~850ドル水準では値ごろ買いが入り易い一方、
1,000ドル台定着を打診するにはエネルギー不足の結果、安値低迷状態が続き易い。
貴金属相場の全体の値位置が切り上がる中、特に日本の投資家の間ではプラチナに対する関心が高まっている。
割高感の強くなってきた金やパラジウムに対して、まだプラチナには大きな投資妙味が残されているのではないかとの思惑が存在するためだ。
しかし、プラチナ相場は需給緩和という理由があって割安な状態に放置されているのであり、訳なく低迷している訳ではない。
本来は需要環境悪化とのバランスを取るために減産対応が求められるが、
プラチナと同時に産出されるパラジウムやロジウム相場が急伸している結果、
鉱山会社のプラチナ相場低迷に対する許容度は高まっている。
つまり、価格による需給調整機能が働きづらい環境になっている。
結果として、供給過剰状態の解消は難しく、他貴金属相場に対する割安感で一時的に相場を押し上げても、それを持続するエネルギーを欠いている。
割安な価格でプラチナ宝飾品や地金、コインなどを購入する好機ではあるが、それがプラチナ相場の先高観を意味するかと言えば、別問題になる。