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「指示役」が無罪に…赤坂8000万円「二重強盗」事件の闇
東京都港区赤坂の路上で平成31年1月、貴金属買い取り業者が現金約8千万円を強奪された事件があった。公判などから浮かび上がったのは、犯人グループが別の集団に襲撃され、奪ったはずのカネを奪われるという複雑な「二重強盗」の構図。これまでに暴力団組員ら計20人以上が逮捕されたが客観証拠は乏しく、令和4年6月には指示役の一人とされた男性に無罪が言い渡された。3年以上経った今も、事件の全容は明らかになっていない。
■白昼堂々の犯行
松の内も明けぬ平成31年1月5日午後2時ごろ。赤坂の路上で、現金約8千万円が入ったキャリーケースを運んでいた貴金属買い取り業者が数人の男らに襲撃された。ケースを強奪した路上強盗グループは車で逃走を図り、指示役から指定を受けて、東京外環道の新倉パーキングエリア(埼玉県和光市)へ向かった。
待ち受けていたのは、このカネを狙っていた別のグループ。「標的」となったのは、路上強盗グループの当時19歳の少年だった。「勘定のため」とカネを持たせて車に乗り込ませ、待ち受けていた横取りグループから暴行を受けた。少年は鼻骨骨折などの重傷を負い、約8千万円を奪われた。
警視庁は、「2度目の強盗」はカネの流れをわかりにくくするための犯行で、あらかじめ計画されていたものとみて捜査。1度目の路上強盗グループも含め、20人以上を逮捕した。カネを奪った横取りグループが、それぞれ10万~50万円の報酬を受領したことも判明した。
■次々証言も…
そんな横取りグループの「キーマン」と目されていたのが、2021年2月に逮捕された元暴力団組員の男性(30)だった。強盗致傷罪などに問われ、今年6月に東京地裁で行われた男性の公判では、横取りグループの男らが証人として次々と出廷。つぐんでいた口を開き、男性が指示役の中心だったと、次々と証言した。
「当時は仲も良かったし、報復を恐れる気持ちもあって黙っていたが、いつまでもかばっていてもしようがない。(真実を話すことが)社会に出るにあたり、やらないといけないことだと思った」。事件の指示役の一人で、懲役10年が確定した友人の受刑者は、翻意した理由をこう説明した。
公判では、今回の二重強盗を発案した「上役」の存在もほのめかされた。「仲間内で裏切るから」。横取りグループの実行役の一人は事件当日の朝、電話で知らない男からこう説明されたと明かした。
検察側は、証言などから男性が事件の主導的役割を担っていたと訴えたが、地裁は2022年6月29日、強盗致傷罪については無罪判決を言い渡した。裁判長は「証言は虚偽や思い込みの可能性がある」として信用性を否定し、検察側の主張を退けた。検察側は不服として 2022年 7月12日付で控訴した。
首謀者は誰なのか、奪われた8千万円はどこに消えたのか-。警視庁は、暴力団に流れた可能性もあるとみて捜査を継続している。
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